一般建設業許可の完全ガイド 取得から更新まで失敗しないための実務ポイント
新しく建設業を始めたいけれど、一般建設業許可の条件や手続きが複雑でどこから手を付ければいいのか分からない――そんな不安を抱えていませんか。必要な書類や審査ポイントを正しく理解すれば、申請ミスや時間のロスは防げます。このガイドでは、実務でつまずきやすいポイントを整理し、スムーズな許可取得への道筋を具体的に示します。
一般建設業許可の基本と必要性

一般建設業許可とは、建設業を営む者が軽微な工事を超える請負を行う際に、法律で義務付けられた許可制度です。建設業法第3条に基づき、法人・個人・下請の区別なく適用されます。つまり、請負金額が一定基準を超える工事を受注する場合、必ず許可を取得しなければなりません。
軽微な工事とは、建築一式工事であれば1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事を指します。他の工事の場合は、1件の請負代金が500万円未満であれば軽微工事とされ、この範囲内なら許可を要しません。なお、請負代金は消費税相当額を含めた金額で判定される点に注意が必要です。
建築一式工事の軽微基準(1,500万円/150㎡)
その他工事の軽微基準(500万円)
許可区分(知事許可/大臣許可)
営業範囲に応じた許可区分も重要です。都道府県内にのみ営業所を設置する場合は「知事許可」、複数都道府県に営業所を設けると「大臣許可」となります。ここで誤解されがちなのは、施工エリアが全国でも営業所が1県内なら知事許可で足りるという点です。区分判断は営業所の所在地で行われ、施工地域ではありません。
また、無許可営業を行った場合は建設業法第45条により刑事罰の対象となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人にも両罰規定が適用される可能性があります。無許可営業による契約は社会的信用を失うだけでなく、発注者からの支払拒否や履行不能といった実害もあり、経営リスクは極めて高いといえます。
許可の基本を理解したところで、次にどのような要件を満たせば一般建設業許可を取得できるのかを詳しく見ていきましょう。
一般建設業許可の取得要件と審査基準

一般建設業許可の要件は、建設業法で明確に定められており、審査では5つの主要項目を満たしているかが確認されます。これらは単なる形式ではなく、事業運営の実態や信頼性を判断するための重要基準です。とくに「経営業務管理責任者とは何か」「専任技術者の資格要件はどの程度か」など、誤解されやすい部分を正確に理解しておく必要があります。
主な5要件は以下の通りです。
経営業務の管理体制があること(旧来の「経営業務管理責任者のみ」ではなく体制で判断)
専任技術者を営業所ごとに配置していること
誠実性があり、不正・不誠実な行為がないこと
財産的基礎または金銭的信用があること(自己資金500万円以上が目安)
欠格事由に該当しないこと
| 要件項目 | 主な確認資料 |
|---|---|
| 経営体制 | 様式第7号・7号の2、役員経験証明 |
| 専任技術者 | 資格証、実務経験証明書、卒業証明書 |
| 財産的基礎 | 残高証明書、融資証明書、財務諸表 |
| 誠実性 | 申請者の過去の違反歴・契約トラブルの有無 |
| 欠格要件 | 身分証明書、登記されていないことの証明書 |
経営業務の管理体制では、常勤役員等が過去に建設業の経営を補佐・統括した経験を有しているかを確認します。これは単に「役員歴がある」だけでは足りず、営業や契約の実務を統括した実績が必要です。
専任技術者の資格要件は、国家資格(建築士・施工管理技士など)を保有するか、一定の実務経験を積んでいること(大学卒3年、高校卒5年など)で証明します。
また、財産的基礎の基準と証明方法としては、自己資金500万円以上を有していること、あるいはそれと同等の資金調達ができることを最新の残高証明で示すのが一般的です。
欠格事由と審査で落ちる理由としては、役員や主要構成員が過去に不正な行為をした場合や、必要な書類の不整合がある場合などが挙げられます。
これらの要件をすべて満たした上で、次は実際にどのように申請の流れを組み立て、必要書類を整えるかを解説します。
一般建設業許可の申請手続きと必要書類一覧

一般建設業の申請手順ガイドとしてまず確認すべきは、申請の窓口と提出書類の順番です。申請先は「主たる営業所所在地の都道府県知事」であり、大臣許可ではなく知事許可の範囲であれば、県庁の建設業許可担当課が受付窓口となります。提出前に必ず書類の有効期限(発行から3か月以内など)を確認しておくことが重要です。特に身分証明書や残高証明書は有効期間が短いため、他の資料を整えてから発行を依頼するのが効率的です。
申請書類のチェックリストを以下に示します。これらの資料は単に揃えるだけでなく、経営体制・技術資格・財務基盤の実態を裏づけるものとして整合性が求められます。書類の一部は様式指定があり、記入内容の不備や不足資料があると再提出を求められることも珍しくありません。また、営業所の実在性を証明するため、写真や図面の提出が求められる点も多くの方が見落としがちです。
登記事項証明書
定款
経営体制証明書(様式第7号または7号の2)
専任技術者証明書
資格証・実務経験証明書類
納税証明書(法人税・消費税等)
財務諸表(直近決算期の貸借対照表・損益計算書等)
営業所写真(外観・入口・内部・標識など)
身分証明書(役員全員分)
登記されていないことの証明書
これらの建設業許可の必要書類一覧を基に、準備は「法人情報」「経営管理」「技術資格」「財務」の4グループに分けて進めると効率的です。特に経営業務の管理体制と専任技術者の証明は審査ポイントが多く、経験内容の説明文や補佐体制の図示を追加すると審査官に理解されやすくなります。営業所写真や図面要件も実態確認の対象となるため、臨時スペースではなく常設性のある事務所であることが確認できる角度から撮影して提出するのが望ましいです。
書類が準備できたら、次に気になるのは費用と審査にかかる時間です。その実情を確認していきましょう。
一般建設業許可にかかる費用と期間の目安

一般建設業 許可 の取得には、行政庁手数料と専門家への依頼費用(行政書士報酬)が主なコストとなります。行政庁手数料は全国一律ではなく、都道府県によってわずかに異なりますが、標準額は明確に定められています。初めての申請(新規)の場合、知事許可ではおおむね9万円前後、大臣許可では約15万円前後が相場です。更新申請も同額で、5年ごとの更新が義務付けられています。業種を追加する場合には1業種あたり5万円程度を見込むと良いでしょう。
費用構造の代表的な内訳は以下のとおりです。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 知事許可(新規) | 約9万円 |
| 知事許可(更新・5年ごと) | 約9万円 |
| 大臣許可(新規) | 約15万円 |
| 業種追加 | 約5万円/件 |
| 行政書士報酬 | 約10〜30万円 |
建設業許可の費用相場 は、行政庁手数料に加え、申請書類の整備や相談対応を依頼する際の行政書士報酬も考慮する必要があります。経験豊富な申請代行業者の選び方としては、建設業法に精通し、過去の許可取得実績や不備修正のスピード対応ができる事務所を基準にするのが安全です。
認可取得にかかる期間 は、書類が整っている場合で通常1〜2か月ほどですが、不備があると補正対応でさらに数週間延びることもあります。特に初回申請では、経営業務管理体制や専任技術者の証明資料に時間がかかることが多いため、余裕を持ったスケジュール設計が重要です。
費用や期間のイメージが掴めたら、次に一般建設業と特定建設業の違いを整理し、自社にどちらの許可が必要なのかを判断しましょう。
一般建設業許可と特定建設業許可の違い

特定建設業と一般建設業の違いは、元請が一次下請へ発注する「下請け代金の合計額」で決まります。最も重要な判断基準は、1件の工事における一次下請けへの発注総額が5,000万円(建築一式工事では8,000万円)を超えるかどうかです。
この金額を超える工事を請け負う場合は特定建設業許可が必要であり、逆にそれ未満であれば一般建設業許可で施工可能です。つまり、一般建設業許可の請負金額上限は 一次下請総額5,000万円未満(建築一式では8,000万円未満) となります。
よくある誤解として、「一般建設業では下請けを使えない」「小規模工事しかできない」というものがありますが、これは誤りです。一般許可であっても一次下請金額の基準を超えない範囲であれば、元請・下請のいずれでも施工を行うことが可能です。
下請けと請負金額の扱いを整理した比較表は以下の通りです。
| 区分 | 請負基準 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 一般建設業許可 | 一次下請総額が5,000万円未満(建築一式は8,000万円未満) | 標準的な経営体制・技術者資格・自己資金500万円以上 |
| 特定建設業許可 | 一次下請総額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上) | 経営審査や財務基準(自己資本額・欠損額など)の厳格審査 |
このように特定建設業では、下請けへの支払い規模が大きくなるため、財務体力や経営管理能力がより厳しく求められます。一方で、一般建設業は多様な中小規模工事に柔軟に対応できる許可であり、事業規模や元請比率により許可区分を検討することが重要です。
事業拡大を進める中で、下請け金額が上限に近づく事業者も少なくありません。特定許可への移行を視野に入れる事業者も多いでしょう。次では、特定許可で求められる追加要件と注意点を見ていきます。
特定許可への移行時に求められる追加要件
特定建設業許可に移行する際は、一般建設業 許可 よりも厳格な審査基準が適用されます。特に重要なのが、財産的基礎の基準と証明方法です。特定許可では、単なる資金残高証明ではなく、貸借対照表に基づく純資産要件が必要となります。具体的には、債務超過でないこと、流動比率がおおむね75%以上であることなど、企業の財務健全性が審査対象となります。さらに、財務諸表をもとに作成される財務審査票を添付し、経営内容を定量的に示さなければなりません。融資証明や資本金増資を行って要件を整えるケースも多く見られます。
以下のチェックリストを確認すると、特定許可への移行準備が効率的に進められます。
純資産の確認
流動比率の把握
専任技術者資格の更新
財務審査票の準備
また、専任技術者の兼任ルールも一般建設業から特定建設業へ移行する際の注目点です。特定許可では、営業所ごとに配置される専任技術者がより高度な資格を保持している必要があります。代表的な要件として、1級施工管理技士または同等の国家資格保持が必須です。一般許可で2級施工管理技士を専任としていた場合は、そのままでは特定の技術要件を満たさないため、補強体制または有資格者の追加配置が必要です。
さらに、特定から一般への変更手続きも存在します。経営規模縮小や下請金額の減少により要件を下回る場合は、許可種別の変更申請を行うことができます。この場合も、経営体制や技術者配置の再確認が必要です。審査基準の詳細解説としては、特定許可では申請時だけでなく更新時にも財務状態が評価される点に注意が必要です。
許可を取得した後は、それを維持するための更新や変更手続きにも注意が必要です。続いて更新時のチェックポイントを整理します。
一般建設業許可の更新と維持に関する実務ポイント
一般建設業 許可 の有効期間は5年間であり、期限の30日前までに更新申請を行わなければなりません。これを過ぎると、許可が自動的に失効し、営業が一時的にできなくなるため、早めのスケジュール管理が必須です。更新では、新規取得時と同様に「経営業務体制」「専任技術者」「財務」「誠実性」「欠格要件」の5つが改めて審査されます。特に、専任技術者が常勤であるか、資格が有効かどうかの確認は重点的にチェックされます。また、財務内容や役員構成に変更がある場合は、変更届を先に提出しておくと審査が円滑に進みます。
許可の更新手続きと期限を守るためには、事業年度ごとの報告書類(決算変更届・事業年度終了届など)の提出も欠かせません。これらを怠ると、更新前に行政からの指導が入るケースもあります。もし許可更新をうっかり忘れた場合、再申請扱いとなり、再び審査を受ける必要があります。その間は無許可営業とみなされる可能性があるため、絶対に避けるべきです。以下のチェックリストを使って、更新準備を確実に行いましょう。
有効期限の確認(満了30日前までに申請)
専任技術者の常勤性・資格の再確認
財務諸表・残高証明書の最新化
役員・経営体制の変更有無の確認
年次報告義務(決算変更届・事業年度終了届)の提出
許可の更新を確実に維持するためには、これらを毎年度の社内管理スケジュールに組み込み、担当者を明確にしておくことが重要です。更新時のうっかり失効を防ぐには、期限の6か月前に社内で点検を始めるのがおすすめです。
ここまで一般建設業許可の取得から維持までの流れを体系的に見てきました。最後に、理解を深めるためのよくある質問や誤解を整理しておきましょう。
一般建設業許可に関するよくある質問と誤解の整理
建設業許可の取得を検討する際、特に多いのが「制度の仕組みを誤って理解しているケース」です。実務上は些細な勘違いが申請遅延や無許可状態につながることもあり、正確な知識が不可欠です。ここでは、一般建設業 許可 に関するよくあるQ&Aをもとに、代表的な誤解を整理します。
- Q1:一般許可では下請を使えないのですか?
→ A:使用できます。一次下請への発注総額が5,000万円未満(建築一式工事では8,000万円未満)であれば、元請・下請どちらでも施工が可能です。誤って「下請禁止」だと考える方が多いですが、実際には工事金額の閾値で判断されます。
- Q2:知事許可と大臣許可の違いは施工エリアですか?
→ A:違います。区分は「営業所の所在地」によって決まります。都道府県内にのみ営業所がある場合は知事許可、複数都道府県に営業所を設置する場合は大臣許可になります。施工地域が全国であっても、営業所が一県内であれば知事許可で十分です。
- Q3:軽微工事の金額判定は税抜で行うのですか?
→ A:いいえ、消費税相当額を含む税込金額で判断します。たとえば請負金額が税込500万円未満の場合のみ、軽微工事として許可が不要となります。税抜金額で誤って判定すると、無許可営業とみなされるリスクがあります。
このほかにも「更新手続きは自動延長される」「500万円未満ならどんな工事でもできる」など、実務と異なる認識が目立ちます。実際の現場では、許可取得によって公共工事の入札資格が得られたり、取引先からの信頼度が上がるという明確なメリットがあります。許可の理解を正しく持つことが、制度を経営に活かす第一歩となります。
一般建設業 許可の取得で失敗しないためのまとめ
ここまで一般建設業許可の概要や要件、特定建設業への移行条件などを整理してきましたが、最も大切なのは「自社の状況に合わせて正確に準備を進めること」です。経営業務管理責任者や専任技術者の資格確認、財産的基礎の証明、欠格要件への注意といった各ステップを一つずつ明確にしておくことで、申請後の修正対応や再提出といったムダな時間を防げます。
特に多くの事業者が陥りやすい課題として、「必要書類の抜け漏れ」や「提出先ごとの基準確認不足」があります。自治体や申請窓口によって求められる書類形式が微妙に異なるため、公式要領を参照しながら最新情報を把握することが重要です。また、初めて申請する場合はスケジュール管理も忘れずに行いましょう。目安として、経営業務管理責任者の実務経験証明や決算資料の整備には数週間から1か月ほどかかります。余裕をもった準備が最短取得への近道になりますよ。
一般建設業許可の取得は、自社が正式に建設工事を受注できるスタートラインです。複雑な要件や書類手続きに不安を感じる方でも、一つずつ理解して行動すれば確実に前進できます。不明点を抱えたまま進めるよりも、早い段階で制度全体を整理することで、結果的にコストも労力も削減できます。
この記事を参考に、迷いや不安を解消しながら、自社に最適な形で一般建設業許可を取得してください。準備が整えば、安心して建設事業を展開できる明確な道が見えてきますよ。


