建設業許可代表者変更の完全ガイド 登記から届出・必要書類まで失敗しない手続きステップ
代表者が交代したのはいいけれど、建設業許可の変更届…何から手を付ければいいのか分からない。登記、書類、提出期限──一つでも抜ければ許可が無効になる不安がよぎる。この記事では、その「手続きの迷路」を順序立てて整理し、再申請の手間やリスクを避けるための道筋を具体的に示します。
建設業許可の代表者変更手続きの全体像と必要な準備

建設業許可代表者変更は、建設業法に基づいて必ず届出が求められる重要な手続きです。
代表者や役員等に変更があった場合には、「建設業許可変更届(様式第22号の2)」を変更発生日から30日以内に提出する必要があります。
この「変更発生日」は登記事項証明書に記載されている就任日が基準となり、都道府県知事許可・大臣許可のいずれも同様に適用されます。
提出先は、知事許可の場合は都道府県の建設業担当課、大臣許可の場合は関東地方整備局などの所管部署で、原則として正本1通を提出します(控えを希望する場合は副本も)。
変更があった登記を完了させてから届出書を作成するのが一般的な流れであり、登記事項の内容と届出書の記載は完全に一致していなければ差し戻されるリスクがあります。
代表者変更に必要な書類一覧は次のとおりです。
これらは代表者変更の内容(内部昇格か外部新任か)によって組み合わせが変わるため、準備段階で確認が欠かせません。
様式第22号の2(変更届出書・第一面)
登記事項証明書(履歴事項全部証明書・3か月以内)
代表者の身分証明書
登記されていないことの証明書(新任の場合)
誓約書(様式第6号)
自力で行う代表者変更のステップとしては、まず登記変更が完了した日を正確に確認することが重要です。
そこから30日以内に書類を整え、郵送または窓口提出を行います。
添付書類には有効期限があるため、登記事項証明書・身分証明書・登記されていないことの証明書はいずれも申請日から3か月以内のものを使用します。
また、代表者が専任技術者や常勤役員等を兼ねている場合には、それらの変更届(様式第7号・第8号など)も同時に必要となるケースがあるため、早めの整理・確認が求められます。
こうした基礎を押さえたうえで、次に実際の登記変更と届出期限の関係を詳しく見ていきましょう。
登記変更と建設業許可代表者変更届の提出期限

代表者変更の期限と注意点のうちで最も大切なのは、「登記変更の完了日」がそのまま届出期限の起算点になるということです。
建設業許可における代表者(申請者)や役員の変更は、登記簿上で就任・退任が確定した日から30日以内に「変更届(様式第22号の2)」を提出しなければなりません。
この30日という期限は、届出書が行政庁に「到着」した日を基準に判断されます。
つまり郵送の場合、消印日ではなく到着日で締切が決まるため、連休や郵送遅延を見越して早めに準備するのが安全です。
変更届を提出するまでの流れは、
まず登記申請を完了→登記事項証明書を取得→届出書を作成→期限内に提出、
という順で進めます。
登記事項証明書に記載された就任日が実際の期限計算の起点です。
誤って登記手続完了日を基準にしてカウントすると期限を過ぎることが多いので要注意です。
代表者変更のほかにも、区分ごとに届出期限が異なります。
主要な変更区分を以下に整理します。
代表者(申請者)・役員等の変更:30日以内
常勤役員等(旧経管)・補佐者:2週間以内
専任技術者等の変更:2週間以内
健康保険等加入状況の変更:2週間以内
変更届提出後の審査期間の目安としては、群馬県知事許可・関東地整大臣許可いずれも、おおむね2〜3週間前後で受理・確認が完了します。特に不備がなければ追加書類の要求はほとんどありません。
期限超過の対応方法については、「監督(指示)処分」の対象になる可能性があるため、遅延理由を明確にして「経過説明書」を添付するのが実務的対応です。やむを得ず期限を超えた場合でも、すぐに県土整備部や関東地整の担当へ相談し、正式に受理してもらうことが重要です。
変更届期限の管理とリマインド方法としては、
代表者変更登記の申請日に合わせて社内カレンダーや共有スケジュールアプリで「30日以内に届出」とアラートを設定しておく方法が有効です。
期限確認を担当事務と二重チェックすることで、ヒューマンエラーを防げます。
期限を守ることが基本ですが、届出内容を正確に整えるためには、添付すべき書類をきちんと理解しておく必要があります。次の章では、その書類一式を詳しく見ていきます。
建設業許可代表者変更に必要な書類一覧と添付要件

代表者変更に必要な書類一覧を正しくそろえることは、届出を一発で通すための最重要ポイントです。
誤った様式や期限切れの証明書を提出すると差戻しになり、手続きが遅れる原因になります。
ここでは、変更内容ごとの必要添付書類を整理し、代表的なケース別にまとめました。
| ケース | 必要書類 | 留意点 |
|---|---|---|
| 既存取締役が代表に昇格 | 様式第22号の2、登記事項証明書 | 登記事項証明書は発行から3か月以内 |
| 外部新任代表を迎える | 上記+様式第6号(誓約書)、様式第13号(調書)、登記されていないことの証明書、身分証明書 | 証明書類の有効期限は3か月以内、発行日を要確認 |
| 代表者が専任技術者を兼任 | 様式第8号一式(担当業種区分に応じて) | 資格証の写しを添付、営業所ごとの区分に注意 |
| 退任・削除のみ | 様式第22号の2 | 削除理由と日付の記載漏れに注意 |
登記簿謄本(登記事項証明書)の提出はすべてのケースで必須です。
オンライン発行も可ですが、3か月以内のものに限られます。
印鑑証明は通常不要ですが、委任状を用いて代理人が手続きを行う場合は、委任者(会社側)の実印で押印し、印鑑証明書(3か月以内)を添付するのが一般的です。
委任状のフォーマットは自由様式でも構いませんが、「届出に関する一切の権限を委任する」文言を明記しておくと手戻りを防げます。
書類準備において特に注意すべきは、有効期限の管理です。
登記事項証明書・身分証明書・登記されていないことの証明書はいずれも申請日から3か月以内のものを添付する必要があります。
期限切れ書類は受理されないため、発行日をファイル名やチェックリストに明記して管理するのが確実です。
具体的な書類を整えたら、次はそれらをどこへ、どの方法で提出するのかを押さえておく必要があります。
建設業許可代表者変更届の提出先と申請方法(紙・電子の比較)

建設業許可の代表者変更を行う際、まず押さえるべきは「どこに、どの方法で」届出を出すかです。
提出先は、許可区分(知事許可か大臣許可か)によって異なります。
群馬県知事許可の場合は、県の担当課である「県土整備部 建設企画課 建設業対策室」が窓口になります。
一方で大臣許可(関東地方整備局管轄)であれば、関東地方整備局 建設業課が提出先です。
いずれも郵送または窓口持参が可能で、電子申請への対応は自治体によって運用が違います。
建設業許可の変更届提出先を整理すると以下のとおりです。
| 提出先 | 提出方法 |
|---|---|
| 群馬県知事許可 | 県土整備部 建設企画課 建設業対策室(来庁・郵送) |
| 大臣許可(関東地方整備局) | 書面持参または郵送(正本1通、控えが必要なら副本も) |
| 一部自治体(試行中) | 電子申請(電子署名・添付PDF必須) |
紙提出とオンライン申請の比較では、紙提出の方が一般的で、即日受付・確認が可能です。
電子申請は導入自治体が限られ、対応している場合も「電子署名」「PDF添付」「事前ID登録」などの前提条件があります。
特に代表者変更では、登記事項証明書や誓約書などの添付資料が多いため、PDF化時のファイルサイズ上限にも注意が必要です。
郵送の場合は「到着日」が届出期限判定の基準になるため、連休や配送遅延を見越して余裕を持って投函することが重要です。
来庁提出では受付時間帯(群馬県は平日8:30〜17:15)を守り、正副2部を準備しておくとスムーズです。
届出の提出先を理解した後は、変更後にどのような実務影響があるのかを把握しておくことが重要です。
代表者変更が建設業許可や経営業務体制に与える影響

代表者を変更すると、建設業許可上の「常勤役員等」配置体制や経営業務の運営枠組みに直接影響します。
現行制度では旧「経営業務の管理責任者」要件が廃止され、「常勤役員等」またはその補佐者の配置で経営業務体制を確認する方式に改められました。
したがって、代表者変更により取締役構成や勤務実態に変動がある場合は、単なる登記変更にとどまらず「建設業許可上の人員要件」が基準を満たしているか再点検が必要です。
特に新代表者が他社兼任や非常勤の場合、常勤性を満たさないと判断され、許可維持に支障を来す恐れがあります。
常勤性や経験年数を確認するためには、以下の書類を整えて証明するのが実務的です。
社会保険・厚生年金の標準報酬決定通知書
勤務証明書または在籍証明書
経験年数証明書
役員会議事録または選任決議書
これらの資料で常勤勤務実態を客観的に示すことが求められます。
特に社会保険加入記録と給与支払証跡は最も重視されるポイントであり、在籍証明と整合していなければ、常勤役員等として認められないケースもあります。
経験年数証明書については、過去勤務先の発行や許可行政庁指定様式による自己証明などで補うことが可能です。
さらに代表者変更は経営事項審査(経審)にも直接関係します。
経審申請時点で代表者氏名・役員構成・登記事項証明書が建設業許可情報と一致していなければ、経審申請自体が受理されません。
したがって代表者変更届(22号の2)を提出し、行政側の許可簿情報が更新された後でなければ経審手続きは進められない点に注意が必要です。
体制面の整合性が整ったら、最後に変更手続き後の確認やトラブル防止のための最終チェックを行いましょう。
建設業許可代表者変更後の確認事項とトラブル防止チェックリスト
代表者変更手続きが行政に受理された後でも、社内外での名義や表示内容を正しく更新しなければ実務上のトラブルが起こりやすいです。
特に「登記事項との不一致」や「現場の許可票未更新」は、監督指導や発注者からの指摘につながる典型的な見落としです。
このため、以下の代表者変更で失敗しないチェックリストに沿って、関係資料の最終確認を行うことが重要です。
代表者変更を確実に完了させる最終チェック(8項目)
登記事項証明書と届出内容の一致確認
許可票・看板・名刺・Webサイトの名義更新
建設業許可証明書の交付申請(必要時)
工事現場の許可票差替え
社内通知と取引先への変更案内
常勤役員等・専任技術者との人事整合
経審・入札資格情報の更新
書類保管・控えの整理
まず、登記事項証明書と提出書類の記載内容が完全に一致しているか確認します。
住所表記の枝番や代表者の氏名漢字ミスなどが差戻しの主な原因です。
次に、建設業許可票の書き換え方法をチェックしましょう。
工事現場での表示(許可票)変更義務があるため、新代表者名で掲示し直さないと行政の是正指導対象となる可能性があります。
会社本社、営業所、すべての現場看板の名義表示を同時に差し替えるのが安心です。
また、建設業許可通知書は自動で再交付されません。
代表者変更後に取引先提出用の証明が必要な場合は、「建設業許可証明書」を新たに申請します。
群馬県知事許可では県収入証紙400円/枚が必要で、交付請求書の提出で即日または数日以内に発行されます。
常勤役員等や専任技術者の配置に変更が含まれる場合は、社内で人事データを確認し、経審や入札資格情報にも反映します。
最後に、届出書副本や添付書類を整理・保管し、発行日や有効期限を一覧で管理しておくと、次回更新時に備えられます。
これらの最終確認を怠らなければ、代表者変更手続きはスムーズに完了し、許可の維持と信頼の両立が可能になります。
建設業許可代表者変更で失敗しないためのまとめ
代表者変更手続きの本質は、「許可の継続性を確保すること」にあります。登記が完了しているか、変更届は期限内に提出できるか、経営業務の管理責任者や専任技術者の要件が引き続き満たされているか――この3点を確認することが、手続きの混乱を防ぐ第一歩です。
提出書類についても、ケースに応じて必要な内容が異なります。既存取締役の昇格と新任取締役の就任とでは添付書類が変わるため、事前の確認が欠かせません。また、変更届の提出を怠ると行政処分や罰則の対象になる可能性があり、更新・業種追加など次の手続きにも支障をきたします。そのため、登記完了後すぐに変更届を準備するのが理想です。
結局のところ、建設業許可の代表者変更で重要なのは「正確さ」と「スピード」です。提出漏れや遅延を防ぐことで、事業停止のリスクを回避し、許可の信頼性を保つことができます。もし不明点がある場合や書類作成に不安がある場合は、経験豊富な専門家に相談するのも有効です。手続きの流れを理解し、確実に対応することで、経営基盤を揺るぎないものにできますよ。

