建設業許可のための基礎工事の種類と判断基準完全ガイド
基礎工事を始めるにあたり、建設業許可の手続きは頭を悩ませる課題です。具体的にどの許可が必要で、どのように申請を進めるべきか心配でしょうか。この記事では、中小建設会社の経営者や現場責任者の方が、申請時の混乱を避けてスムーズに許可を取得するための手順や必要なポイントをわかりやすく解説しています。これを読むことで、自信を持って手続きを進められるようになりますよ。
基礎工事は「とび・土工・コンクリート工事業」に該当するのか?

基礎工事を業として行うには、原則として建設業許可の取得が必要です。
なかでも住宅や中小規模施設における基礎工は、「とび・土工・コンクリート工事業」に分類されるケースが一般的です。
その理由は、これらの基礎工事が一式工事ではなく専門的な下請レベルの施工にあたることが多いためです。
仮に建物本体や構造物全体を総合的に請け負う場合でなければ、「建築一式」や「土木一式」の許可では対応できないことがあります。
以下は、「とび・土工・コンクリート工事業」に該当する主な基礎関連作業の例です。
- 仮設足場および支保工
- 掘削および根切り
- 地盤改良(水固化処理など)
- くい打ち、くい抜き
- 土留め(矢板・H鋼設置等)
- 盛土、埋戻し
- 基礎型枠の組立およびコンクリート打設
これらはいずれも、とび職や土工作業者によって実施される内容であり、「とび・土工・コンクリート」の許可で一括してカバー可能です。
ただし機械設備など重量物を恒久的に据え付ける作業については「機械器具設置工事業」に該当する可能性もあるため、誤認しないよう注意が必要です。
実務上でもっとも多いミスが、基礎主体の小規模請負にもかかわらず「土木一式」で申請してしまうケースです。
この場合、役所側から「一式とは認められない」として申請自体が不受理になることがあります。
適正な許可を取得せずに500万円以上(税込)の請負契約を結ぶと無許可営業となり罰則対象になるため、自社の施工範囲と内容を正確に分析した上で、該当する許可区分を選定することが不可欠です。
建設業許可で求められる人的要件とは?

建設業許可を取得するためには、形だけの会社体制ではNGです。
「常勤役員等」と「専任技術者」という2つの人的要件を満たすことが必須となっています。
これは、単に現場経験がある人がいればいいという話ではなく、国土交通省の基準に基づいた明確な構成と証明が求められます。
まず、「常勤役員等」に関しては、2020年以降の法改正により、旧制度の「経営業務管理責任者」は撤廃されています。
現在は、「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」がある体制があればOKとされており、この“体制”とは主として常勤役員またはそれを直接補佐する人物で構成されます。
実質的には、建設業務や会社経営経験に通じた人材が役員として日常的な運営を担っている必要があります。
次に、「専任技術者」の配置です。営業所ごとに1名以上必要で、基本的にその拠点で専属勤務していなければなりません(他社との兼任不可)。
この技術者には3つのルートがあります:
- 大学・高専の指定学科卒:実務経験3年以上
- 高校・中等教育学校卒:実務経験5年以上
- 学歴不問:実務経験10年以上
または該当業種ごとの国家資格(建築士・施工管理技士など)でも要件をクリアできます。
特定建設業の場合はさらに一段階上の条件が加わります。
上記一般建設業の要件+「5,000万円以上(税込)の工事で2年間以上」の指導監督的実務経験か、指定された1級国家資格(例:1級施工管理技士)など限定された資格取得者であることが必要です。
下記表で簡潔に整理しました:
要件項目 | 一般建設業の場合 | 特定建設業の場合 |
---|---|---|
学歴+実務年数 | 大卒3年/高卒5年 | +5,000万円超の現場実務2年 |
実務経験のみ | 10年以上 | 一般要件+監督経験 |
国家資格 | 所定の資格 | 1級限定あり(指定業種) |
証明資料についても注意が必要です。
例えば「大学・高校卒+実務」の場合は、卒業証明書だけでなく在籍時期・職種内容・従事期間まで記載された従前企業からの証明書類も必須です。
過去勤務先との連絡や資料収集には時間がかかるケースも多く、余裕を持って準備しておくことを強くおすすめします。
基礎工事の場合、「とび・土工・コンクリート工事」であってもこの人的要件はしっかり満たす必要があります。「昔現場やってたからOK」と思われる方ほど書類上まとめきれず不受理になるパターンも多いため侮れませんよ。
建設業許可を取得するための資金・財務的基準

建設業許可を取得するには、会社としての経営能力だけでなく「財産的基礎」を有していることが必須条件となります。
つまり、「ある程度ちゃんとしたお金を持っている会社か」「資金力に支障がないか」といった基礎体力が問われるわけです。
これは、公共事業や下請取引における信用確保の観点からも重視されています。
現在の制度では、財産的基礎として以下3つのいずれかをクリアしていればOKとなっています。
- 自己資本額が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力を客観資料で示せること
- 直近の決算において債務超過でないこと
創業間もない法人や個人事業主の場合でも、「既に手元に500万円以上持っている」ことが外形的に示せればクリアできます。
このようなパターンでは金融機関発行の口座残高証明+帳簿資料が有効になります。
許可取得タイミングでは必ず審査される項目なので、「なんとなく大丈夫だろう」で進めず、必要書類は事前によくチェックしましょう。
建設業許可申請の流れと必要書類

基礎工事を業として行う場合でも、建設業許可の取得にはしっかりとした申請手続きが必要です。
まず、申請までの大まかな流れは以下のようになります。
- 自社が行う工事内容と金額をもとに「主たる業種(例:とび・土工・コンクリート工事)」を確定
- 必要な人的要件(常勤役員等・専任技術者)の確認と証明資料の収集
- 財務状況の確認(自己資本、決算内容など)
- 書類一式をそろえて都道府県または国土交通省へ提出
このように、許可制度における法的手続きでは、準備段階からしっかり段取りを取ることが求められます。
次に、実際に必要となる書類について整理します。以下は建設業許可申請で一般的に求められる主な資料です。
■ 建設業許可申請に必要な主な書類一覧
- 常勤役員等の体制証明書
- 専任技術者の資格証明書/実務証明
- 財務諸表(直近3期分)
- 登記簿謄本(法人の場合)
- 営業所の写真と賃貸借契約書等
- 欠格事由に該当しない旨の誓約書
これらはすべて原則として「写しではなく原本」または「写しでも有効なもの」に限定されます。
特に専任技術者については過去勤務先から実務証明をもらうことが多く、その取得には時間がかかるため早めの対応が重要です。
提出後は標準的な処理期間として「約1か月」が設定されています。
これはあくまで書類不備がない前提であり、不備や追加提出が発生するとさらに時間が延びます。
無事受理されれば後日「許可通知」が郵送または窓口交付で届き、それ以降正式に建設業として500万円以上(税込)の仕事を引き受けることが可能となります。
なお、一度取得した許可にも期限があります。有効期間は5年で、更新には「満了日の3か月前から30日前まで」に再度提出する必要があります。
ギリギリで焦って準備不十分となり“期限切れ”になるケースも少なくないため、「更新日は逆算してスケジューリングする」意識を持つことが大切です。
「軽微な工事」と基礎工事における許可不要の判断基準

基礎工事を行う際、必ずしもすべての案件で建設業の許可が必要になるとは限りません。
建設業法上、「軽微な工事」に該当するケースであれば、許可を取得しなくても合法的に請負可能とされています。
では、その「軽微」の線引きはどこにあるのでしょうか?
結論から言えば、「建築一式工事」は税込1,500万円未満または木造住宅150㎡未満(一定の構造制限あり)、「それ以外の工事」は税込500万円未満であれば許可不要と判定されます。
この判定基準は元請・下請を問わず「1件あたりの契約金額(税込)」で見られ、施工内容や継続性ではありません。
つまり、たとえば外構付きの延べ床80㎡木造住宅を900万円(税込)で請け負う場合、それが一式工事として成立していれば建築基準法や建設業法上も「軽微」であり、無許可でも違反になりません。
逆に500万円を少しでも超える掘削~型枠~打設といった専門的な基礎部分を個別契約しただけでも、その時点で許可対象になる点には注意が必要です。
特にありがちな誤解が「元請だけが対象となる」という思い込みですが、それは完全な間違いですね。
下請契約でも税込500万以上なら立派に建設業法に触れる対象です。
無許可営業が発覚すると指名停止や罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)にもなりますので、金額ラインには常に敏感であるべきです。
■ 軽微工事となる判断基準チェックリスト
- 建築一式工事:1,500万円(税込)未満
- 建築一式工事:木造住宅150㎡未満(構造制限あり)
- その他の工事:500万円(税込)未満
- 請負金額は1件ごとの税込金額で判定
- 元請・下請を問わず同一基準で適用
よくある失敗例と基礎工事許可申請での注意点
基礎工事で建設業許可を取得する際、見落としやすいミスは意外と多くあります。
特に「業種選定ミス」と「要件証明の甘さ」が審査プロセスでの大きなつまずきポイントになりがちです。
現場経験者が代表を務める小規模事業者の場合、「昔現場でやってたから」感覚で申請し、不受理になる例が頻出します。
たとえば高校卒5年未満・大学卒3年未満の実務では、専任技術者としての証明が足りません。
また、大学等の卒業証明書が揃っても、従前勤務先からの実務期間証明が提出できずに止まるケースも珍しくありません。
附帯工事についても要注意です。
主たる基礎工事に含まれる範囲を超えて外構・植栽などを請け負った場合、それは別業種扱いとなり無許可施工となるリスクがあります。
附帯かどうかの判断は「契約全体における比重」と「一式性との関係性」で左右されるため、曖昧なまま進めないことが重要です。
各自治体で一定期間内(群馬県では30日前まで)の更新ルールを守れていないケースも散見されます。
意図せぬ失効→新規取得扱いとなれば手数料・手間ともに倍増するため、余裕をもった準備をおすすめします。
もし下記いずれかに当てはまるようなら、一度専門家への相談を検討してみるタイミングです。
■ 基礎工事業者によくある失敗例一覧
- とび・土工・コンクリート工事業ではなく、土木一式で誤申請
- 大学卒で実務1年のみ→3年間要件不足で不受理
- 技術証明として不十分な資料(資格証不備など)
- 更新期限30日前を過ぎて提出→失効
- 附帯工事として請けた外構工事で無許可扱い
これらはいずれも建設業法および法律遵守上クリティカルな問題につながります。
初動段階から正しい方針判断と、必要書類の段取り管理こそが許可取得成功への最短ルートです。
基礎工事 建設業 許可を取得するための結論
基礎工事を始めるにあたり、建設業許可の取得は複雑で、適切に進めるためには綿密な準備が必要です。まず、基礎工事が「とび・土工・コンクリート工事」に該当するか確認し、それに応じた許可区分を正確に把握することが重要です。申請においては、経営責任者や技術責任者として適任の人材を配置し、それぞれの要件を満たしていることを確認してください。申請書類の不備や誤って異なる業種で申請してしまうことで、許可取得が遅れるリスクがありますので、十分注意しましょう。
これまで述べたポイントを押さえておくことで、許可申請時の不安や失敗を減らし、スムーズな手続きを進めることができます。不明点がある場合は、信頼できる専門家のサポートを受けるのも一つの方法です。許可取得後も安心して基礎工事を行えるよう、この知識を役立ててください。成功への一歩を踏み出せることを願っています。