建設業を営む上で、「経営業務の管理責任者」(以下、経管)の存在は不可欠です。
経管は、対外的な責任を負い、会社の顔となる重要な役職です。また、法令遵守や経営判断において中心的な役割を果たし、建設業許可の取得・維持に直結する存在でもあります。
しかし、経管の重要性にもかかわらず、突然の病気や事故、退職などにより、経管が不在となるケースは少なくありません。経管の不在は、建設業許可の取消しや事業継続の危機に直結する深刻な問題となり得ます。
そこで、この記事では、経管不在が引き起こす具体的な問題点と、その対応策について詳しく解説します。また、経管不在時の建設業許可取得・維持のポイントや、当事務所ならではの対応策についても触れていきます。
ぜひ最後までお読みください。
経営業務の管理責任者の役割と重要性
経管は、建設業法で定められた重要な役職です。会社の経営において中心的な役割を果たし、対外的な責任を負います。
一般的に、許可を受ける主体が法人の場合は常勤の役員、個人の場合は事業主本人が該当します。このように、単なる名義上の役職ではなく、実質的に経営に携わり、重要な意思決定に参加している人物を選ぶことが重要です。
経営業務の管理責任者の不在がもたらすリスクと影響
経管が不在となった場合、以下のようなリスクに直面し、建設業許可や事業運営に重大な影響を及ぼします。
1.建設業許可への影響
- 新規許可取得が困難:新たに建設業許可を取得できません。
- 許可の更新不可:既存の許可を更新できない可能性があります。
- 許可の取消し:長期的な不在は既存の許可取消しにつながる可能性があります。
- 営業停止処分:経管の不在や不備を理由に営業停止処分を受ける可能性があります。
2.事業運営への影響
- 入札資格の喪失:許可取消しで、多くの入札に参加できなくなる可能性があります。
- 信用低下:取引先や金融機関に経営体制の不安定さを印象づけてしまう可能性があります。
- 経営判断の遅延:重要な意思決定の遅れで、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。
- コンプライアンス上の問題:法令遵守責任者の不在は、意図しない法令違反を犯すリスクが高まります。
これらのリスクは、企業の存続に関わる深刻な問題です。経管の不在は可能な限り避け、迅速に対応することが求められます。
経営業務の管理責任者不在時の具体的な対応策
一時的な不在への対処法
経管が病気や出張などで一時的に不在となる場合は、以下のような対応が考えられます。
- 代行者の選任:経管の職務を代行できる十分な知識と経験を有する副社長や他の取締役など、要件を満たす人物に一時的に代行してもらう。
- 所管行政庁への報告:不在の理由と期間、代行者の情報などを所管行政庁に報告し、指示を仰ぐ。
- 緊急連絡体制の構築:入院中などであっても重要な意思決定に参加できるような連絡体制を整える。
- 権限の委譲:不在中の意思決定プロセスを明確にし、必要に応じて権限を委譲する。
長期的な不在や欠員への対策
経管が長期的に不在となる場合や、退職などで欠員が生じた場合は、新たな経管を選任し、速やかに許可の変更手続きを行う必要があります。
後任が見つかるまでの間、事業を継続するために一時的に外部から経管の要件を満たす人材を雇い入れるという方法もあります。
新たな経管を選任する場合の流れは、以下の通りです。
- 候補者の選定:社内外から適切な候補者を探す。
- 要件の確認:選定した候補者が経営業務の管理責任者の要件を満たしているかを確認。
- 必要書類の準備:経歴書や登記簿謄本登記簿謄本など、必要な書類を準備。
- 所管行政庁への届出:新たな経営業務の管理責任者の選任について、所管行政庁に届出。
- 社内体制の整備:新たな経営業務の管理責任者を中心とした経営体制を整える。
経営業務の管理責任者の不在を防ぎ、自社を守るために
経営業務の管理責任者不在リスクを最小限に抑えるための事前対策
経管の不在リスクを最小限に抑えるためには、以下のような事前対策を整えておくことをおすすめします。
- 後継者計画の策定:後継者を育成し、円滑な交代ができるように準備。
- 複数の候補者の確保:経管の要件を満たす人材を複数確保しておく。
- 定期的な健康診断:経管の健康管理を徹底し、突然の病気などを予防する。
- 緊急時対応マニュアルの作成:不在時の対応手順を事前にマニュアル化しておく。
- 経営幹部の教育:経管候補者に対して継続的な教育と研修を実施し、いつでも代行できる体制を構築しておく。
経営業務の管理責任者が不在時の対応策:専門家の視点から
当事務所では、経管不在時の対応策として、以下の方法をおすすめしています。
要件を満たすために5年間待つ
経管不在時の最もシンプルな対応策は、新たに経管となる人材が経験を積むまで、資格要件を満たす5年間を待つことです。
経管を外部から招く
もう一つの対応策は、外部から経管を招くことです。
例えば、引退した親や友人など、既に経管としての資格を持つ人物を一時的に招くことで、経管不在の問題を解決することができます。
ただし、この方法では、経営方針や業務の進め方に対する意見の相違から、仲違いするリスクがあります。また、新たに経管を雇用する場合、社会保険の加入が必須となり追加のコストが発生します。
個人事業主の補佐経験を活用
経管の資格要件として、個人事業主の補佐経験を活用することができます。
例えば、申請者の父親が建設業の個人事業主であった場合、経理などで補佐していた母親を経管にするという方法などです。
通常は、過去の注文書や契約書、銀行通帳の振込記録などの書類を用意する必要がありますが、群馬県では発注証明書があるため、注文書などがなくても対応しやすいという特徴があります。
そのため、他の県と比較して証明書類の準備が容易で、補佐経験者を経管として認定を受けやすいのです。
まとめ:経営業務の管理責任者不在時の対応策や後任選任対策は行政書士と共に
経管の不在は、建設業許可の取消しや事業継続の危機に直結する深刻な問題です。
しかし、適切な対策を講じることで、そのリスクを最小限に抑えることができます。
行政書士は、建設業許可に関する豊富な知識と経験があり、経管不在時の対応策や後任選任に関して、実務的なアドバイスができます。
もし、経管の不在でお悩みなら、ぜひ当事務所へお問い合わせください。私たちが全力でサポートいたします。
最終更新日:2024/10/16
注意:法律・制度は改正される可能性があります。本記事の内容は最終更新日時点のものです。最新かつ正確な情報については、関係機関への確認や専門家へのご相談をおすすめします。
また、本記事は群馬県を基準に執筆しており、他地域では異なる場合もありますのでご注意ください。
当事務所では、常に最新の情報提供に努めております。ご不明点やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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