建設業許可の新規取得の手続きは難しいかと聞かれれば──YESと答えます。ですが、不可能ではありません。他の行政書士事務所の記事を読んでいただければ「何度も県庁に足を運べばできる」と書かれているのではないでしょうか。
では、建設業許可を取得した後の変更、更新手続きはどうでしょうか?
結論から言えば──「専門家がいたほうがいい」です。
例えば、リフォーム、改修、増築などの仕事を請け負う社長も多いと思いますが、これらは新築工事とは全く違う戦い方ですよね。許可申請も同じことが言えます。
今回は、建設業許可の新規取得・許可変更について、現場のリアルを交えてお話しします。
建設業許可の新規取得・許可変更はどっちが難しい?

社長、新築とリフォームでは、求められる段取りや考え方がまるで違いますよね。
建設業許可の新規・許可変更の難易度の考え方は、新築工事とリフォーム工事に似ています。例を挙げて見てみましょう。
新規での許可取得
- 申請者の状況を調べ、必要書類を整える
- 人的・物的・財務的な基準に合致させる
- 記載ミスや要件漏れに注意しながら、社長と県庁とのやり取り
新築工事に例えると…
- 土地の選定から設計・建築まで、一から組み上げる
- 法律・基準に沿って、正解がはっきりしている
- 工期も予測でき、各業者との段取りが組みやすい
新規の許可取得は新築工事と似ていて、「最初の設計=書類構成」がしっかりしていれば、あとは段取りで進められる。手引きも豊富です。
許可変更
一方、許可変更はまさに“予測不能”です。
- 変更前提の情報がバラバラ、更新されていないことも
- 代表者・本店所在地・業種などが変わっているが、反映されていない
- 資格・経営経験・要件を満たさなくなっている場合もある
リフォーム・改修工事に例えると…
- 既存の構造に合わせて、臨機応変に対応
- 思ってもみなかった歪み、劣化、配線の不具合…
- 古い図面もなく、「やってみないと分からない」ことが多い
建物で言えば、骨組みだけ残して全面やり直し──そういう作業になることも珍しくありません。
「こんなに崩れていたのか…」と気づくのは、現場に立ったとき。許可業務もまさにそれです。
許可変更は「手引きがない」から難しい
新規許可取得はマニュアルがある
行政が出している「手引き」「申請の手順書」があるから、ある意味、何度でもやり直せる、トライできる構造になっています。
変更は現場対応
ところが変更手続きになると、一気に情報が減ります。
- 「こういう場合はこの手続きを」程度のことしか書かれていない
- 事例や背景、注意点は載っていない
- 担当者によって見解が分かれることもある
「なんとなく、そろそろ変えた方がいいのかな…?」と思っていても、実際に何をどう変えればいいか分からない、という社長は多いです。
なぜ、許可変更手続きが後回しになるのか?
理由① 必要な手続きを知らない
許可を取った時点で「もう完了!」と思ってしまう。でも、実際は「更新」「変更」「追加」「廃業」など、その後もずっと動き続けるものなんです。
理由② 会社の未来と手続きがリンクしていない
私はよくこう聞きます。

「この会社、5年後どうなっていたいですか?」
「子どもに継がせたいですか?それとも自分が現場に立ち続けますか?」
この雑談の中から、「あ、それならこの手続きが必要かも」と気づけることがあるんです。
手続きを“こなす”だけでなく、“未来の選択肢を作る”こと。これが本当のパートナーだと思っています。
情報のズレが信頼の喪失につながる
今はネットで何でも見られる時代です。
- 登記簿
- 国税庁の法人番号
- 建設キャリアアップシステム
- 社会保険の加入状況
調べればすぐに分かります。情報が許可の内容と違っていれば、「あれ?この会社ちょっとおかしくない?」と疑われる。
実際に、採用や業者間取引でも「表と裏が違う会社」は避けられる傾向にあります。
そして、許可が更新できなくなれば、それまでの仕事がすべて止まります。
社長の命を守る1枚の紙──建設業許可証
うちのスタッフには、こう伝えています。
「建設業許可証は社長の人生と命そのものだ」と。
- 毎日現場に立ち、体を張ってきた時間
- 疲れても勉強をして取得した資格
- 資本金をかき集めて、書類を整えた日々
すべてが、この1枚の許可証に詰まっている。
でも──多くの士業にとって、それは「数ある業務のひとつ」。
手数料が入る仕事、定期的な手続き、くらいに思われていることもあります。
どうせ同じ時間とお金を払うなら、「人生を一緒に見てくれる人」と手を組んでほしいんです。もちろん、私でなくてもいいので。
許可は“取得”より“運用”が肝心
取得はスタートライン。そこからの5年、10年を見据えていくのが経営です。
リフォームと同じように、会社も成長すれば手直しが必要になる。
その時、「あの人がいれば安心」と言ってもらえる存在でありたいと、私は思っています。